病気の原因はストレスであると発見した
セリエ博士は、ストレスの引き起こす段階も
わかりやすく解明しています。
それは、General adaptation syndrome(略称GAS)、
日本語で「適応症候群理論」と呼ばれます。
ストレスに対し、ヒトがどう反応し、
やがて、適応していくか、
そのプロセスはとても興味深いものです。
動物もヒトもストレスに直面したときには、
ストレスの種類に関わらず、
同じ防御パターンや適応パターンを取るのです。
ストレスに反応する主役は、
下垂体前葉と副腎皮質系のホルモンで、
その反応段階は3つに分けられます。
①警告反応期
ストレスに耐えるために内部環境を準備する緊急反応をする時期。
下垂体前葉と副腎が活発に反応している状態です。
②抵抗期
ストレスへの適応が完成し、安定した時期。
しかし、この状態を維持するにはエネルギーを必要とします。
ストレスが続き、過労により下垂体前葉と副腎が異常をきたすと
さまざまな種類のホルモン分泌が枯渇していき、
次の状態である疲憊期(慢性疲労の状態)に突入していきます。
この時期にストレスが弱まるか消えれば、元の健康を取り戻します。
③疲憊期(ひへいき)
長期にわたるストレスに対抗できなくなり、体が衰えてしまう時期。
初期には、心拍・血圧・血糖値・体温が低下します。
この状態が続くと体はどんどん衰弱していきます。
ひどい場合には、朝起きるのもつらくなり、
性欲が減退したり、痩せたり太ったりなど、
体形まで変化するなど明らかな変化もありますが、
多くの場合は周りにも気づかれにくく、
本人もただ何となく調子が悪い、
元気がないという感覚を抱いているだけで
自覚していないことが多いようです。
慢性的に疲れている人やうつや引きこもり
といったケースも、本人が気づかないうちに
長期的にこの「疲弊期」=「副腎疲労」の状態
にあるとおもわれます。
下垂体前葉も副腎も健康維持に
必要な様々なホルモンを分泌。
それを通じ、身体の各器官に命令を出す
重要な働きをします。
その下垂体前葉と副腎がストレスを受けすぎて疲弊し、
機能が低下すると、これらのホルモンが
正常に分泌されなくなります。
それが、慢性的な倦怠感や無気力感
といった疲労症状を起こします。
この症状は現在、副腎疲労
(英語でアドレナル・ファティーグ)
と呼ばれるもので、1990年代、アメリカの
J・ウイルソン医師が見い出した現象です。
セリエ博士は、これに先立ち、
副腎を摘出したマウスがこれらのストレス反応を
起こさないことを突き止め、
副腎皮質から出るステロイドホルモンが、
ストレス反応に関わっていることを証明していました。
(ストレスって何?③につづく)